☆傲岸不遜とはこのことを言うのであろう。


平成15年6月23日の日経新聞『春秋』

春秋

 マツタケの人工栽培については、「誤報」「虚報」が幾重にも積み重なり、死屍累々(ししるいるい)。なのに性懲りもなく……。最近、テレビ番組や一部の新聞が「人工栽培マツタケ」と報じたキノコを、森林総合研究所が鑑定したら、案の定、正体はシイタケだった。

▼発売元は出荷を停止し、農水省の指導に従うという。マツタケは生きた松の根と共生して、菌根をつくって暮らす。この性質を頑固に曲げない。なんとか人工の培地でキノコ(子実体)に育てようと、シイタケの菌糸と融合させる試みはこれまでも山ほどあったが、にょっきり出てくるのは、みなシイタケ。

▼たかがマツタケ、されどマツタケ。科学的評価という当然の作法を忘れると、虚報を重ねることになる。マツタケ博士の異名もある生物環境研究所の小川真所長は、日本列島は今、マツタケならぬ「松林」の危機にあるという。太平洋側ではそう目立たないが、日本海側では海辺の黒松も、山の赤松も枯れている。

▼中国地方から始まり、北陸、東北と松枯れは北上、秋田や佐渡でも枯死した松の姿が目立つ。白砂青松が、灰色のコンクリートに茶色の枯れ松というさびれた景色に。ナラやシイも根腐れで枯れ始めている。今、日本中の里山や海辺の防潮林で進行している危機、迎え撃つ戦略はまだない。


…ところで、科学的評価という当然の作法を忘れ、「誤報」「虚報」を朝日,毎日に先んじて報道したのはあろうことか『日経新聞』だった。


 自分たちの失敗を反省するどころか、いかにも他人事かのように責任転嫁をするあたり、現在の「日本経済」を象徴しているかのような記事とコラムである。なるほど、だから「日本経済新聞」というのであろう。